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調べて出てきた税金の数字は、この3か所で間違えます ― AIも検索も、事故る場所は同じ

2026-09-08/池田 信明

従業員に昼食代を出している会社が、給与として課税されずに負担できる上限が、令和8年(2026年)4月1日から月3,500円→月7,500円に上がりました。昭和59年に3,500円と決まって以来、42年ぶりの改定です。

ところが今この金額を調べると、3,500円と出てきます。AIに聞いても、検索して出てくる解説記事を読んでも、そして国税庁自身が出している冊子を見ても、まだ3,500円のままです(後で実物を出します)。

AIを使っている人だけの話ではありません。ネットで調べて金額を決めた人は、同じ場所で間違えます。そして間違え方には型があって、いつも同じ3か所です。

この記事は、私が実際に踏んだ3つだけを書きます。一般論の「調べた情報は間違っていることがあります」ではなく、どこで、どう間違えて、どう確かめればよかったかを、実物のURLと一緒に並べます。

結論を先に3行で

  • パターン1:古い数字が出てきます。税制は毎年変わるので、少し前の情報がそのまま残ります。国税庁自身の冊子が古いままのこともあります
  • パターン2:AIが読めていないのに、それらしい答えを返します。国税庁のサイトのうち、税務署が実務で使う細かい取扱いを示した文書(通達)と、個別のケースに国税庁が答えた事例集(質疑応答事例)のページだけ、AIからは読めません。しかも「読めませんでした」とは言ってくれません
  • パターン3:条件が1つ落ちます。答えそのものは合っているのに、それが通用しない場合が抜けます。落ちるのはたいてい「そもそも自社のやり方が、その制度の対象になっているか」の部分です。金額の条件は守っているのに、渡し方が違うせいで全額が給与になる、という形で出ます

パターン1 ― 古い数字が出てくる

いちばん多い事故です。冒頭の食事補助がまさにこれでした。

3,500円のつもりで制度を設計すると、7,500円まで使えたのに半分以下しか使っていないことになります。すでに昼食代を出している会社なら、今の設定額を見るだけで分かる話です。

なぜ古い数字が出てくるのか、理由は2つあります。

理由1: ネット上の解説記事が、まだ3,500円のまま残っています。改正から数か月しか経っていないので、検索して上位に出てくる記事の多くが改正前に書かれたものです。AIもそれを読みます。

理由2: 国税庁自身の冊子が、まだ3,500円のままです。これが厄介でした。会社が給料から税金を天引きするときの手引きとして国税庁が毎年出している「源泉徴収のあらまし」(令和8年版)を確認したところ、2026年9月時点で次のように書かれています。文末の「所基通36−38の2」は、この取扱いの根拠になっている通達の番号です。

(前略)使用者の負担額が月額3,500円を超えるときは、その使用者の負担額(その食事の価額−その人の負担した金額)の全額が給与所得とされます(所基通36−38の2)。

深夜勤務者の夜食代についても「勤務1回につき300円以下」のままです(正しくは650円に上がっています)。同じ国税庁のサイトの中で数字が食い違っている状態なので、どちらを引いてくるかは運になります。

パターン1の確かめ方

ページに書かれた日付を見てください。タックスアンサー(国税庁のQ&Aのページ)には、必ず上のほうに「令和◯年◯月◯日現在法令等」と書かれています。ここが自分の知りたい時期より前なら、その後に改正が入っている可能性があります。

AIに聞くときは、金額を聞くだけでなく「その金額がいつ時点のものか、どのページのどこに書いてあるか」まで答えさせてください。日付とURLが出てこない答えは、確認していない答えです。

パターン2 ― 読めていないのに、それらしい答えを返す

これがいちばん見抜きにくいものでした。

先に、いちばん使える見分け方を書きます。ブラウザのアドレス欄に law という文字が入っていたら、AIには読めないページだと思ってください。読めるほうのタックスアンサーには taxanswer が入ります。

理由は、国税庁のサイトがページによって日本語の保存のしかたを変えているからです。日本語をコンピュータに保存する方式(文字コード)が2種類あって、どちらで書かれているかがページごとに違います。国税庁のページを17ページ分、実際に開いて確かめたところ、きれいに分かれました。

ページの種類 保存方式 AIから見ると
タックスアンサー(No.◯◯◯◯のページ)・国税庁トップ 新しいほう ふつうに読める
税務署内部の取扱いを示した文書(通達) 古いほう 文字がぐちゃぐちゃに見える
個別のケースへの事例集(質疑応答事例) 古いほう 文字がぐちゃぐちゃに見える
給料から税金を天引きする会社向けのお知らせ 古いほう 文字がぐちゃぐちゃに見える

ブラウザは違いを見て切り替えるので、自分の画面では正しく表示されます。読みに行くAI側が確認していないときだけ壊れます。

実際に返ってきた答え

令和8年3月31日付の改正通達のページ(深夜勤務者の夜食代を300円から650円に上げるもの)を読ませたら、こうなりました。

通達名:「所得税に関する基本通達の一部改正」関連 改正年月日:昭和59年7月26日付 改正内容の一部:「新しい解釈」について「旧来」の記載を「改正後」のように改める旨

日付が42年ずれています。改正後の金額である650円は、答えに一度も出てきていません。

「昭和59年7月26日」という日付自体は、そのページに実在します。改正の対象になった元の通達の日付です。文字化けしても半角の数字やアルファベットだけは壊れずに残るので、生き残った日付と番号をつなぎ合わせて、答えの形だけが整ってしまったのだと思われます。全部が読めなくなるなら「読めない」と分かるのですが、そうはならないところが厄介です。

パターン2の確かめ方 ― 1分で判定できます

使っているAIがこの問題を持っているかは、URLを1つ渡すだけで分かります。次のページは、深夜勤務者の夜食代の通達です。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/840726/01.htm

これを渡して、「このページに書かれている金額はいくらですか」と聞いてください。

  • 「650円」と答えたら、そのAIは保存方式を確認して読んでいます
  • 「読めない」「文字化けしている」と答えたら、読めていませんが、正直に言っているので危険はありません
  • 650円以外の数字や、それらしい説明が返ってきたら、この記事の状態です

パターン2の回避策 ― PDFを渡す

読めないと分かっても、あきらめる必要はありません。改正通達のページには、改正前と改正後を左右に並べた表(新旧対照表)のPDFがリンクされていることが多く、このPDFは文字化けしません。

  1. 通達のページをブラウザで開く(自分の目には正しく表示されます)
  2. ページの下のほうにある「新旧対照表(PDF/◯◯KB)」というリンクを探す
  3. そのリンクを右クリックして「リンクのアドレスをコピー」を選ぶ
  4. コピーしたPDFのURLをAIに渡す

PDFが付いていない通達もあります。その場合は、ブラウザで開いて必要な部分を選択してコピーし、AIに貼り付けてください。手作業ですが、間違った答えを受け取るよりは確実です。

パターン3 ― 条件が1つ落ちる

3つのうち、いちばん金額に響くのがこれです。答え自体は間違っていないのに、その答えが通用する前提が落ちます。

食事補助の話に戻ります。「食事補助はいくらまで給与にならない(非課税になる)のですか」と聞くと、条件を2つ答えてくると思います。

  1. 本人が食事代の半分以上を負担していること
  2. 会社の負担が月7,500円以下であること

これは正しいです。国税庁が税務署向けに出している取扱いの文書(所得税基本通達36-38の2)に、そう書いてあります。ところがこの2つを守っていても、全額が給与になる場合があります。

会社が食事そのものを渡しているのか、お金を渡しているのか、という区別です。社員が店で払って、領収書を出させて、会社が半額を口座に振り込む。半額負担も7,500円も守った設計ですが、これは全額が給与になります。渡しているのが食事ではなくお金だからです。

なぜこの条件が落ちるのか

理由がはっきりしています。この区別は、通達の本文には書かれていません。通達に書いてあるのは「支給した食事につき」という言葉だけです。現金で補助した場合にどうなるかは、別の場所で示されています。国税庁が個別のケースに答えた事例集(質疑応答事例)です。

そしてこの事例集は、パターン2で書いたとおりAIから読めないページです。通達だけを読んだAIは、この条件を落とします。

パターン3の確かめ方

制度の名前で聞くのではなく、自社のやり方をそのまま説明して聞いてください。

  • 悪い聞き方:「食事補助の非課税の条件を教えて」
  • よい聞き方:「社員が自分で店に払って、月末に領収書を出してもらい、会社が半額を給与と一緒に振り込んでいます。この形で給与にならずに済みますか」

前者だと制度の説明が返ってきます。後者だと、その形が対象外であることに当たる確率が上がります。

それでも落ちることはあるので、最後にこう聞いてください。「この制度が使えない場合を、条件ごとに挙げてください」。使える条件より、使えない場合のほうが落ちやすいところです。

事故らない聞き方(まとめ)

3つのパターンに対応させると、聞き方はこうなります。

何を防ぐか 聞き方
パターン1(古い数字) 「その金額はいつ時点のものですか。改正はありませんでしたか。根拠のURLも教えてください」
パターン2(読めていない答え) 「そのページが読めなかった場合は、読めなかったと言ってください」
パターン3(落ちた条件) 「この制度が使えない場合を、条件ごとに挙げてください」

そのうえで、返ってきた数字・日付・通達の番号は、自分でそのページをブラウザで開いて見てください。ブラウザなら正しく表示されます。ここだけは代われません。

明日やること

まず、自社の食事補助を見る

  1. 従業員に昼食代を出しているなら、今いくらで組んでいるかを確認する。3,500円を上限にしているなら、7,500円まで広げる余地があります。ただし本人負担の割合や渡し方の条件があるので、金額を変える前に顧問税理士に相談してください

自分のAIを判定する(1分)

  1. 使っているAIに、この通達のページを渡して「このページに書かれている金額はいくらですか」と聞く → https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/840726/01.htm
  2. 650円と答えなかった場合、そのAIに通達(アドレスに law が入るページです)を読ませるのはやめる。タックスアンサー(アドレスに taxanswer が入るページ)までは読めるので、そこまでは任せてよい
  3. 通達の中身が必要になったら、そのページをブラウザで開き、下のほうの「新旧対照表(PDF/◯◯KB)」を右クリック → リンクのアドレスをコピーして、そのPDFのURLをAIに渡す

過去に調べた数字を点検する

  1. 直近3か月で、AIやネット検索で調べた結果をもとに金額を決めたことがあれば、その数字・日付・通達の番号だけを書き出す
  2. その数字を、自分でブラウザで国税庁のページを開いて突き合わせる。ページの上のほうの「令和◯年◯月◯日現在法令等」もあわせて見る
  3. ずれていたもの、判断に影響しそうなものがあれば、顧問税理士に一言伝える。まだ手続きが終わっていなければ直せます

これから聞くとき

  1. 次の3行を、いつも使うメモアプリか、よく使う文章の登録機能(単語登録・定型文)に入れておく。毎回打つのは続きません
    • 「その金額はいつ時点のものですか。改正はありませんでしたか。根拠のURLも教えてください」
    • 「そのページが読めなかった場合は、読めなかったと言ってください」
    • 「この制度が使えない場合を、条件ごとに挙げてください」
  2. 金額を決めて発注する、制度を作る、といった後戻りしにくいことの前だけは、調べた答えで止めずに人に確認する

ターミナルが使える方向け(使わない方は読み飛ばしてください)

黒い画面(ターミナル)が使えるなら、iconv で保存方式を変換してから読ませる手があります。

curl -s -L "https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/840726/01.htm" \
  | iconv -f CP932 -t UTF-8 \
  | sed -e 's/<[^>]*>/\n/g' \
  | grep -v '^\s*$'

CP932 は、古いほうの方式(Shift_JIS)をWindowsで実際に使われている形に合わせたものです。SHIFT_JIS と指定するより、①や㈱のような一部の記号で失敗しにくくなります(機種依存文字)。出てきたテキストをAIに貼れば、文字化けの問題は消えます。

仕組みの根拠はHTML Standard の文字コード判定のルールにあります。国税庁側の書き方は正しく、読みに行く側が確認していないことが原因です。


この記事の内容は2026年9月7日時点で確認したものです。

国税庁のサイトの作りも、AIの読み込み処理も、あとから変わる可能性があります。上のテスト用URLで、ときどき確かめ直してください。

食事補助の金額や条件は、自社のケースをそのまま当てはめる前に個別にご相談ください。

参考

#AI活用#国税庁#ファクトチェック#情報収集#食事補助

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