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税務

食事補助の枠が3,500円から7,500円に上がりました ― ただし、振り込んで渡すと全額が給与になります

2026-09-07/池田 信明

昼食代を会社で持ちたい、という話が増えています。給与を上げるより手取りへの効きがよく、金額も小さいからです。

その食事補助について、令和8年(2026年)4月1日から、給与として課税しなくてよい上限が月7,500円になりました。それまでは月3,500円です。3,500円という金額は昭和59年に決まったもので、今回はそれ以来の改定になります。すでに5か月動いているルールなので、4月以降の給与計算が古い基準のままになっていないかは、この記事の最後に確認手順を置きました。

ただ、枠が広がったこと自体より、渡し方を間違えると枠がまったく使えないことのほうが実務では問題になります。国税庁は今年4月に、「領収書を出してもらって半額を口座に振り込む」という制度について、全額が給与になるという見解を示しています。半分は本人が払っているのに、です。

この記事は、食事補助を出している会社、これから出そうとしている会社が、金額と渡し方をどう確認すればよいかだけを扱います。

結論を先に3行で

  • 会社の負担が月7,500円(消費税を除いた金額)以下で、かつ本人が食事代の半分以上を払っていること。この2つを両方満たしたときだけ、給与として課税されません(所得税基本通達36-38の2)
  • 会社が食事そのものを渡していることが前提です。本人が店に払って会社が現金・振込・経費精算で払い戻す形は、後述する深夜勤務者の夜食代に当たる場合を除き、金額がいくらでも全額が給与になります
  • 残業したときや、泊まり・休日の当番(宿直・日直)のときに出す食事は別枠で、無料で出しても課税されません(所得税基本通達36-24)。7,500円の計算にも入れません

何が変わったのか

改正されたのは法律ではなく、国税庁が「この条文はこう扱う」と示している内部向けのルール(法令解釈通達。以下「通達」)です。法律そのものではありませんが、全国の税務署はこれに従って処理するので、実務ではこれが基準になります。令和8年3月31日付で改められ、令和8年(2026年)4月1日以後に渡す食事から新しい金額が適用されています。

改正前 令和8年4月1日以後
会社負担の上限(1人1か月) 3,500円 7,500円
夜10時〜翌朝5時に働く人(深夜勤務者)に、夜食の代わりに渡す現金(勤務1回あたり) 300円 650円
本人が食事代の半分以上を負担する条件 必要 変更なし(引き続き必要)

金額はどちらも消費税を除いた金額で判定します。ここでいう消費税は、請求書に「消費税」として載っている金額(国に納める消費税と、都道府県・市区町村に回る地方消費税の合計)のことです。10%や8%の中に両方が入っているので、区別して考える必要はありません。

ひとつ注意があります。国税庁が毎年出している冊子「源泉徴収のあらまし」(令和8年版)は、2026年9月時点でまだ月額3,500円・深夜勤務の夜食は1回300円のままです。同じ国税庁のサイトの中で数字が食い違っているので、確認するときは記事末尾に挙げた通達本体か、タックスアンサー(いずれも「令和8年4月1日現在法令等」と書かれています)を見てください。

上限が2倍になった一方で、「本人が半分以上払う」という条件はそのまま残りました。ここが今回いちばん誤解されやすいところです。会社が7,500円を出せる場面というのは、食事の値段そのものが月15,000円以上ある場合に限られます。この15,000円は消費税を除いた金額なので、税込みで言えば軽減税率8%の弁当なら16,200円、標準税率10%の食堂なら16,500円です。1か月20日出勤で計算すると、税込みで1食あたり810〜825円以上の食事を、本人と会社で半分ずつ持つイメージになります。

2つの条件は、両方を満たさないと意味がありません

通達の条件を、読者の言葉に置き換えると次の2つです。

条件 満たさないとどうなるか
1 本人から、食事の値段の半分以上を実際に受け取っている 会社負担の全額が給与になる
2 食事の値段から本人の負担額を引いた残り(=会社負担)が、1人1か月あたり7,500円以下(消費税を除く) 会社負担の全額が給与になる

大事なのは、どちらも「超えた部分だけ」ではないという点です。7,500円を1円でも超えたら、超過分の課税ではなく、会社負担の全額が給与になります。「はみ出した分だけ課税でしょう」という思い込みで運用していると、金額が一桁変わります。

「食事の値段」は、会社が弁当や食事を買って渡している場合はその購入した金額、会社の中で作って出している場合は材料などに直接かかった費用で見ます(所得税基本通達36-38。通達の言葉では「材料等に要する直接費の額」)。定価や街の相場ではありません。

「給与になる」と、実際に何が起きるのか

この記事では「全額が給与になります」という言い方を何度もしますが、それが何を意味するかを先に書いておきます。会社負担分が給与になると、次の3つが起きます。

  1. 毎月の給与から天引きする所得税(源泉徴収税額)が増えます。食事補助の金額を給与に足したうえで、天引きする税額を計算し直すことになります
  2. 年末調整と、翌年の住民税の計算にも入ります。本人の年収が、その分だけ増えたものとして扱われます
  3. 社会保険料(健康保険・厚生年金)についても確認が必要です。こちらは所得税とは別のルールで判定します(この記事の後半で触れます)

たとえば会社負担が月9,000円だとすると、年間108,000円が本人の給与に上乗せされたのと同じ扱いになります。「福利厚生のつもりで出していたら、本人の手取りが減っていた」という形になりかねないので、金額そのものより先に、次の章の「渡し方」を確認してください。

渡し方でひっくり返ります ― 会社が食事を渡すか、お金を渡すか

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。

国税庁は、「こういう場合はどう扱いますか」という質問と、それに対する答えをホームページで公開しています(質疑応答事例)。その中に、次のような制度についての回答があります。

会社が近隣の飲食店を指定し、社員がそこで昼食をとって領収書を会社に出す。会社は領収書に書かれた食事代の半額を集計して、月7,500円を上限に社員の口座へ振り込む。半額負担も7,500円の上限も守った設計です。

これに対する国税庁の回答は、全額が給与になるというものでした。理由は金額ではなく、渡しているものが食事ではなくお金だからです。通達が対象にしているのは、会社が役員や従業員に食事そのものを渡す場合(通達の言葉では「使用者が役員又は使用人に対し食事を支給する場合」)であって、本人が店に支払い会社が現金で補助する形は、そもそもこの通達の対象外になります。

一方で同じ回答の中に、こう書かれています。会社と飲食店との契約により、社員の食事代を会社が飲食店に支払う場合は、「食事を支給する場合」に該当するものとして取り扱って差し支えない、と。

つまり、分かれ目はこうなります。

渡し方 扱い
会社が弁当を買って社員に配り、本人から半額を集める 会社が食事そのものを渡している。2つの条件を満たせば課税されない
会社と飲食店・宅配業者が契約し、会社が事業者に直接支払う。本人負担分は給与から天引きする 会社が食事そのものを渡しているものとして扱って差し支えない(質疑応答事例)
本人が店に払い、領収書を出させて会社が現金・振込で補助する。社員の立替を経費精算で払い戻す形もここに入ります 深夜勤務者の夜食代に当たる場合を除き、金額にかかわらず全額が給与
「食事手当」として毎月定額を給与に上乗せする 全額が給与

自社がどれに当てはまるかは、お金が誰から誰へ動いているかを1本の線で書いてみると分かります。会社→飲食店なら上の2つ、会社→社員なら下の2つです。社員が自分のカードで払って月末に精算している場合は、「会社→社員」なので下の扱いになります。

深夜勤務がある会社だけの例外(該当しなければ次の章へ)

上の分かれ目には、1つだけ例外があります。深夜勤務者に対して、夜食の現物を出す代わりに払うお金です。次の条件がすべてそろうと、1回650円以下(消費税を除く)なら課税されません。

  • 深夜勤務者であること。労働協約や就業規則などで決められた正規の勤務時間の一部または全部を、夜10時から翌朝5時までの間に行う人を指します
  • 現物で出すのが著しく難しいこと。会社に調理設備がない、といった理由です
  • 勤務1回ごとの定額であること。通常の給与に加算して払います

条件のうち見落とされやすいのは3つ目です。「今日は残業が長引いたから出前代を出す」という都度の精算は、定額ではないのでここに入りません。逆に言えば、規程で「深夜勤務1回につき650円」と決めてしまえば、現金で払っても課税されません。

金額は税抜きで、10円未満を切り捨てて数えます

7,500円に収まっているかどうかの判定は、消費税を除いた金額で行います。国税庁が税の質問に答えているページ(タックスアンサー)に載っている計算例が分かりやすいので、そのまま引きます。

前提

  • 弁当の提供:1食900円(消費税込み、軽減税率8%)、本人負担450円、月15日
  • 契約食堂での食事:1食900円(消費税込み、標準税率10%)、本人負担450円、月5日

弁当を単に購入して配るだけなら飲食料品の販売なので8%、食堂で食べる場合は食べる場所とサービスの提供なので10%になります。同じ900円でも税率が違う点に注意してください。なお、弁当業者が配膳などのサービスまで行う場合は「ケータリング」に当たり、こちらは10%になります。請求書の税率をそのまま使うのが確実です。

計算

  • 弁当:(900円−450円)×15日=6,750円 → 消費税を除くと 6,750円÷1.08=6,250円(この例はちょうど割り切れます)
  • 食堂:(900円−450円)×5日=2,250円 → 消費税を除くと 2,250円÷1.1=2,045円 → 10円未満を切り捨てて2,040円
  • 合計 8,290円 > 7,500円

したがって、給与として課税しなくてよい枠には収まりません。このとき給与として課税されるのは、消費税を除く前の金額の合計、6,750円+2,250円=9,000円です。判定は消費税を除いた金額で行うのに、課税される金額は消費税込みで計算する、という組み合わせになります。ここは間違えやすいところです。

なお、この判定は1人ごと・1か月ごとに行います。通達が「当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額」「残額が月額7,500円を超えるとき」という書き方をしているためです。会社全体の合計ではありませんし、「年間で平均すれば収まる」という数え方でもありません。

残業のときの食事は、この枠とは別です

残業した人、泊まりや休日の当番で出社した人(宿直・日直)に対して、その勤務があったことにより出す食事は、無料で出しても課税しなくて差し支えないことになっています(所得税基本通達36-24)。半額負担も7,500円も要りません。

ただし通達は、その人の通常の勤務時間外の勤務としてこれらの勤務を行った人に限ると書いています。所定の勤務時間の中に入っている当番や、通常のシフトとしての夜勤は、この枠ではなく前の章の7,500円のルールで見ることになります。

そして7,500円のルールのほうには、「残業・宿日直のときの食事は数に入れない」ということが最初から書かれています(36-38の2が「36-24の食事を除く」としています)。つまり残業のときに出した弁当代は、7,500円の枠を食いません。昼食補助と残業食を同じ勘定科目でまとめて集計していると、枠を超えているように見えてしまうことがあります。会計ソフト側で補助科目やタグを分けておくと、あとで数えるときに困りません。

ここでも、出しているのが食事そのものであることが前提です。「残業したら食事代1,000円」を現金で渡している場合は、前の章の分かれ目に戻ります。

よくある誤解

Q. 半分以上の負担は、1食ごとに見るのですか。それとも月の合計ですか。

通達の文言は「支給した食事につき」実際に受け取っている金額が食事の値段の50%以上、となっています。1食ごとに半額以上を集めておけば、どちらの読み方でも問題になりません。逆に、月末にまとめて調整する運用(安い日と高い日をならして月合計で半額にする)は、説明の手間が増えます。

なお、毎日現金で集める必要はありません。1食ごとに「いくらの食事に、いくら本人負担」を記録しておき、その合計を月1回、給与から天引きする形で構いません。避けたいのは、月の合計だけを見て後から半額になるよう調整する運用です。

Q. 置き型の社食サービスや、食事券、弁当の宅配は使えますか。

契約の形によります。会社が提供事業者に直接支払い、本人負担分を給与から天引きしているなら、上の表の2行目に当たります。本人がその場で支払って会社があとから補助・精算する形なら3行目です。サービス名では決まらないので、契約書と請求書の宛先、お金の流れの3つを見て判断してください。

Q. 社会保険料も7,500円で見てよいですか。

いいえ、別のルールです。社会保険では、食事を出したときの金額を、実際にかかった額ではなく、国が都道府県ごとに決めた単価(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)で計算し、本人負担との関係も所得税とは違う基準で見ます。所得税で課税されなかったからといって、社会保険料の計算からも当然に外れるわけではありません。この単価は見直されることがあり、令和8年度は食事の価額が4月1日から変わっています(住宅の価額は10月1日から)。金額は全国現物給与価額一覧表で確認するか、社会保険の手続きをお願いしている先に確認してください。

Q. 4月以降、3,500円のつもりで給与課税していました。

令和8年4月1日以後に渡した食事から7,500円が適用されるので、会社負担が3,500円超7,500円以下だった月は、課税しなくてよかったことになります。

相談する前に、令和8年4月以降の月ごとに「対象者」「食事の値段」「本人負担額」「会社負担額」を並べた一覧を作っておいてください。それがあれば、年末調整(12月の給与で1年分の所得税を精算する手続き)までに整理できます。

明日やること

まず、渡し方を確認する(ここで行き先が分かれます)

  1. 食事補助を出している場合、お金が会社から誰に払われているかを確認する。飲食店・宅配業者に直接か、社員の口座か(社員の立替を経費精算で払い戻している場合は「社員の口座」です)
  2. 会社が事業者に直接払っている場合 → 3へ進む。社員に払っている(振込・現金・経費精算・給与への上乗せ)場合 → 8へ進む。社員に払っている場合、金額の数え直しは意味がありません。全額が給与だからです

会社が事業者に直接払っている場合

  1. 本人から半額以上を実際に受け取っているかを確認する(給与からの天引きなど、記録が残る形になっているか)
  2. 直近3か月について、1人ごと・1か月ごとに「食事の値段−本人負担額」を出し、本文の計算例のとおりに消費税を除いた金額へ直す(弁当の購入なら8%、食堂での飲食なら10%で割り、10円未満を切り捨てる)
  3. 7,500円以下に収まっているかを確認する。超えている人がいれば、その人の会社負担の全額が給与になります
  4. 残業・宿日直のときに出した食事代が同じ集計に混ざっていないか確認する。混ざっていたら分ける(会計ソフト側で補助科目を分けておく)
  5. 4月以降、3,500円を基準に給与課税していた月がないかを確認する。あれば対象者と金額の一覧を作る

社員にお金で払っている場合

  1. その金額は全額が給与です。毎月の給与計算に入っているかを確認する
  2. 課税されない形に戻したい場合は、社員への振込・精算をやめ、会社が飲食店や宅配業者と契約して会社から直接支払う形に切り替えられないかを検討する(本人負担分は給与からの天引きにします)
  3. 深夜勤務者に現金で夜食代を出している場合は、都度精算ではなく勤務1回あたりの定額で規程に定め、消費税を除いて650円以下にする

数値や通達はこの記事の執筆時点(2026年9月)のものです。金額の基準は法律ではなく通達で決まっているため、改定される可能性があります。また社会保険や労務の取扱いは別に確認が必要です。試算はいずれも記事内の前提を置いたものなので、そのまま自社のケースに当てはめず、就業規則や賃金規程との関係も含めて個別にご相談ください。

参考(一次情報)

#食事補助#現物給与#源泉徴収#給与課税#福利厚生

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